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電気ショック療法による記憶障害

奪われた記憶―記憶と忘却への旅 Book 奪われた記憶―記憶と忘却への旅

著者:ジョナサン・コット
販売元:求龍堂
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新聞の書評で紹介されていて興味が湧いた本、『奪われた記憶』を読んだ。

著者のジョナサン・コット氏は、ローリング・ストーン誌の創刊以来の編集者・インタビュアーであり作家。慢性の鬱病に苦しんでいた彼は、治療の為に繰り返し電気ショック療法を受け、その結果1985年~2000年の15年分の記憶を失ってしまった。

この本は、そんな彼が「記憶とは」をテーマに、様々な分野の専門家(脳神経生物学教授・心理学者・アルツハイマー研究者から宗教家、神秘主義者まで!)との対談などをまとめたものである。

ページをめくった瞬間、あまりの字のギッシリ加減にゲンナリ(´д`) でも頑張って15ページほど読み進むと映画の場面が引用されていたりして面白くなってきた。”ルー・リードやヘミングウェイも電気ショック療法を受けた事がある”などという香ばしい記述もあり。

ルー・リード・・・同性愛を「治療する」為に。1961年(17歳の時)NYの精神病院で。その時の事を『キル・ユア・サンズ』という歌に書いている。

アーネスト・ヘミングウェイ・・・電気ショック療法を20回以上受け、やはり記憶が消えていったらしい。最後の電気ショック療法を受けてから、猟銃で自殺。

この本は記憶を様々な方面から眺めていて、”前世の記憶を持っている女の子”の話も出てくる。私達の多くは前世の記憶を持っていないが、しかしたとえ先週の事だってどのくらい正確に覚えているか。「チベットの事など聞いた事がないから、チベットなど存在しない、という事にはならない(本文より)というチベット仏教の権威との対談も興味深い。

そして「オシリスとイリス」の神話から、「思い出す事は癒す事」である、と。

一方、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を引き起こすような、トラウマになるような有害な記憶もある。しかし映画『エターナル・サンシャイン』や『ペイチェック』等のように、消したい記憶だけをピンポイントで消すことは今のところ不可能である。記憶力が良すぎるのもまた不幸であるとも。つまりは一長一短。なんにでも長所と短所があり、そのバランスが大事なのである。

記憶を失ったら・・・アイデンティティを失う。知っている人も失う。経験も知恵も失う。心のよりどころを失う。それまでの人生を失ってしまう。恐ろしい事です。それに負けずにこの本を完成させたこの著者さん、スゴイ人です。

※著者は電気ショック療法を頭から否定しているのではありません。”すごく効いた!”という人もいる1つの方法であると認めた上で、その危険性がよく説明されないまま行われている事が問題なのだと言っています。

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コメント

記憶って不思議ですよね~
人為的に操作されるのは嫌だと思うけど。
最近、老化による低下を隠せなくもなってるし^_^;
困ったものです(T_T)

投稿: 夢眠 | 2008年3月 1日 (土) 09時44分

15年間の記憶を失うと、精神年齢が15歳若返ったりするのでしょうか?
脳とか心理学とか、興味深いですねー。

投稿: べえし | 2008年3月 1日 (土) 11時13分

こんにちは!
医学治療って、確かに一長一短的なところがあると思います。
ヘミングウェイは、結局 鬱病が治らなかったって事ですよね。
この作者は、鬱病自体は、治ったんでしょうか。
15年間の記憶の喪失って、本当にその人にとって大きな損失ですよね。
それにしても、同性愛の治療に電気ショックが有効なのかしら?

投稿: YAN | 2008年3月 1日 (土) 17時56分

夢眠さんへ----------------------------------------*

人為的に操作されるのは嫌だけど、自分では操作してみたいかも。
「あれ思い出したい!」「あれ忘れたい!」とか
そんな風になれば便利かな~なんて☆

べえしさんへ--------------------------------------*

そういえばそうですね^^;
そこんとこは書かれてませんでしたが。
でももし16歳の時点で15年分失ったら、1歳になっちゃうのかな?
バブバブ言っちゃったりするのかな???

YANさんへ--------------------------------------*

結局この作者さんの鬱病が治ったのかどうかも
そういえば書かれてなかったような☆

同性愛は・・・治らないと思います。病気じゃないしね。

そして、記事の追記---------------------------------*

電気ショック療法。
簡単に言うと「脳にショックを与えてリセットする」療法。
よく考えると、そりゃ記憶も失うってモンですよね。
”壊れたラジオを叩いて直すようなものだ”という記述がありましたが、
人間の脳は、機械とは違うんですから(-_-)
これで都合よく”悪いトコだけ治った!!”って方が奇跡的に思えます。

投稿: わさぴょん | 2008年3月 1日 (土) 19時13分

電気ショック療法は怖いですよね。
『ターネーション』というドキュメンタリー映画は観られたことありますか?。
監督自身の半生を記録した映画です。
監督の母親が、若い頃に受けた電気ショック療法が原因で時々おかしくなってしまう人で(ゲイである監督の恋人を自分の子供だと思ったり)、その親子の関係がとっても切なかったです。
なんか素人には、すごく野蛮な治療法に思えるのですが。

投稿: セス | 2008年3月 2日 (日) 02時20分

セスさんへ----------------------------------------*

『ターネーション』、初めて聞くタイトルです。それ観てみたいな~

現在でも行われているらしいですが・・・
ツライ病気になってしまったら”それでもいいから試してみたい!”と
ワラにもすがる気持ちになるのかも知れませんね☆

投稿: わさぴょん | 2008年3月 2日 (日) 11時02分

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